廣島英雄氏の
パラレルスキー教程

(作成途中)

2007年2月20日更新 1974年カナダスキー遠征写真リンク


廣嶋英雄

大阪大学教授(体育学)

昭和3年岩手中学(現岩手高校)にて岩手県に初めてラグビーを導入。

    釜石工業高校のホームページ

体育学著作

    「体育総論」 岩崎書店 (1953年)

スキー教程著作 世界と日本のスキー歴史館」より

   「スキー教室」 創元社 1953年
   「ゲレンデスキー」 創元社 1957年 
   「全国スキー地案内」 創元社 1960年 
   「スキー上達法」 創元社 1962年
   「スキー上達法」 改訂版 創元社 1965年 
   「スキー10日間」 創元社 Guide Series 1967年 


スキー教程概要

 

プレトレーニング

毎年の暮から始まるスキー場での合宿トレーニングに備えて、秋口に走りこみと関節・筋肉の柔軟化を行う。公園などでストックをもってのクロスカントリー走およびグループ柔軟体操。

平地での慣らし(1時間)

合宿初日は午前中はスキーを付けて、平らな場所(たとえば田圃)を歩き回る。この練習よってストックと連携してスキーを滑らして雪の上を移動する感覚を習得し、スキー板、靴、ストックと自分の身体の一体感を醸成する。

ストックターンの習得(30分)

次に同じ平地でストックターンを学ぶ。これは雪面上で前後の向きを変える技術である。真っ直ぐ立っている状態で、両方のストックを斜め前方にしっかり突く。片方のスキーと両ストックで3点支持を保ち、もう一方のスキーのトップを上げて、スキーが垂直になったらテールを雪に付ける。この場合あげているスキーの方の膝は真っ直ぐして力を抜いていることが大切で、この状態でぐらぐらせず、しっかりとこの状態を保持することが肝要である。付いているスキーのテールを支点にして3点支持を維持し、まわした方の側のストックをまわして、付いているスキーの外側後方に突きなおす。このストックでも身体を支えながら、あげているスキーの先端をテールを支点にして、外側にゆっくり回し、身体もそれにあわせて回し、あげているスキーともう一方のスキーが平行になるようにしておろす。この時点で上半身と頭は完全に90度まわり、すなわちスキーと直角をなす。体重は両方のスキーに均一に配分して、この状態でぐらぐらせず安定して姿勢でこのおかしな格好で立っていられるようにする。次にスキー体重を前方のスキー、すなわち回した方のスキーに移し変え、両ストックとまわした方のスキーの3点支持で、もう一方のスキーの先端をわずかにあげて、身体とともにまわしこんで、ゆっくりスキーが平行になるように下ろす。無理な姿勢の方のストックはスキーを回すのと一緒にまわしてもよいが、最初はスキーを下ろしてから突きなおしてもよい。これで完全に180度方向変換が完了である。この練習を右まわりと左まわりの両方で行い、手順を頭でなく身体が覚えるまで続ける。慣れてきて各動作を止まらずにスムーズに連続すれば1、2秒でできる。斜面ではかならず、谷側のスキーを最初に持ち上げること。こうすると身体は谷側を向き視界が開け、回転途中の両ストックは山側に突くことになり姿勢がより安定し、かつスキーを回す時に雪面はより低いのでスキーの取り回しが楽である。逆はやろうと思ってもできない。

水平感覚(15分)

平地での練習の次は斜面へでるが、適当な斜面(別途記載)にでるために、スキーをつけて登る。初めて斜面にスキーを乗せるときに、スキーは斜面と直角(水平)になっていると安定してとまっていられること、逆に水平でない場合にはスキーは滑り始めること、を覚える。斜面で止まる場合、ストックターンをする場合、そして転倒して起き上がる場合にはスキーが水平になっていることが必要であるので、この水平感覚を身体に覚えさせる。

斜面登り(20分)

斜面での練習をする場所への移動はスキーをつけて足で登る。斜面をスキーで登るには二つの方法がある。先端を「ハの字」開いて斜面に真っ直ぐに向かってストックで支えながら登る方法と、スキーを水平にして階段のように登る方法である。いずれも場合もスキーのエッジが雪面にキチンかかっていないとスキーは横に滑ってしまって登れない。ひざ、足首、腰の位置を調節してエッジが常に雪面をかんでいるようにする。この2つの方法を使って練習場所の斜面まで足で登る。階段登りは右と左を同じように使うために途中でストックターンをして方向を変える。

斜面で停止しながら向きを変える(10分)

斜面でスキーを水平、やや下、やや上など踏み変えてみて、スキーがどのような動作をするかを身に覚えさせる。前を下に向けた場合にスキーが滑り出さないようにストックをやや前方の突いて停止していることを覚える。これの角度をだんだん下の方に広げて、ゆるい斜面ではスキーを真下にむけてもストックで止めていられるようにする。これは次のまっすぐすべりの滑り出し姿勢である。

まっすぐすべり(1時間)

斜面での練習の最初は、前方が高くなって自然に止まることができるような、極めてゆるい平らな斜面を利用して、まっすぐすべること。両方のスキーをぴったり揃え腕は丸くしてしっかりと構えて遠くを見る。滑っている感覚だけを体に教える。また適当な長さの極めてゆるい斜面と前方が必ず自然に止まるようになっている場所を選んで、「スピードがでて転倒してしまったり、どこまでも滑っていって落ちてしまったりするのではないかという恐怖心」を払拭し、かつ「ゆっくり滑走する快感」と「自然に止まる快感」を得る。

ななめすべり(1時間)

まっすぐゆっくり滑って自然に止まることができるようになったら、次は「ななめすべり」(斜滑降のこと)。極めてゆるやかな斜面で水平にたち、両方のスキーをぴったり揃え、山側のスキーをやや前に出し、上体を斜面に平行にしてやや谷側を向き、腕は丸くしてしっかりと構えて遠くを見る。身体全体が「く」の字の形である。この形ができたら、ほんの少し谷の方に向かいこの形を保って滑り始める。前方は自然に止まるように少し高くなっていることが必要。この体型を守ることによってエッジが雪にきっちりとかかり、滑った後(シュプール)がはっきりとして真っ直ぐになる。滑る角度に応じてスピードがコントロールできるので、少しづつ角度のきつい斜面に移動して、自分が決めた一定のスピードでまっすぐに滑ることができるように練習を繰り返す。斜面がきつくなるほど身体の傾きは大きくなる。両方の肩を結ぶ線が斜面と平行になり、腰はより山側になる。

このななめすべりとストックターンができれば、少々急でもほとんどのゲレンデや雪の斜面を安全に下ることができる。

テール浮かし(滑らずに)(15分)

バランスよくうまくまっすぐ滑れるようになったら次の「テール浮かし」の練習。斜面でなく水平な場所に立ち、テールだけを浮かす軽いジャンプの練習。テールが5cmから10cmほど浮く程度。一度ジャンプが出来たら、これを連続して繰り返す練習。動きは滑らかに、静かに飛び上がって静かに下りることが繰り返しできるようになるまで練習する。そのためにはひざを上手く使い、上体をバランスよく保ち、かつ遠くの方を見る。

テール浮かし(まっすぐすべり)(1時間)

水平な場所で止まったままテール浮かしジャンプが連続してスムーズに出来るようになったら、最初のまっすぐすべった場所でまっすぐすべりながらテール浮かしをする。最初が連続するのが難しいので、間隔をあけてジャンプして、次第に連続してかつリズミックにジャンプできるようになるまで繰り返す。最初はどうしてもバランスを崩してぐらぐらしたり転倒するが繰り返して体に覚えさせる。繰り返し練習し、バランスよく気持ち良く楽しくできるまで続ける。

テール浮かし(ななめすべり)(1時間)

「まっすぐすべり」で「テ−ル浮かし」ができるようになったら、次は「ななめすべり」をしながら、「テール浮かし」をする。「まっすぐすべり」の時と同様に繰り返し練習し、安定して繰り返しジャンプしながらすべれるようにする。 このときにリズムを感じると、以後のより高度なパラレルターンの際にも生かされる。この練習は斜面を両側から滑り出すことによって左右均等に同じようにできるまで練習行う。右から左へ行ったら止まった場所でストックターンをして向きを変え、今度は左から右へ行く。滑った後はジグザグを描く。

テールずらし(谷側へ)(1時間)

次の練習は、「ジャンプ」プラス「テールずらし」である。これまでまっすぐはねていたテールを今度は少し谷側へはねる。これははじめてのスキー軸から身体を外す事になるので最初はこわい。テールを谷側へはねると当然はねる前よりもスキーはより上の方へ向くことになるので、自然にスピードが落ちて、止まるので安心である。バタバタしないでスムーズに繰り返しできるようになるまで練習を繰り返す。

テールずらし(山側へ)(1時間)

テールを逆に山側にはねる練習。当然スキーは下に向かうので、これは最初はこわいが、よりゆるやかな斜面を選んで、とんで降りた後にステップを踏んで方向を跳ぶ前と同じ角度になるように元に戻してやる。これが出来ればこれを滑りながら連続してできるようになるまで練習を繰り返す。

テールずらし(両側へ連続して)(1時間)

さて次は山側へステップで戻していた方向を、谷川へのジャンプする「テールずらし」で戻す方法の習得である。前の2つの教程の組み合わせである。谷側、山側のジャンプ「テールずらし」を交互に繰り返し、同じ速度を保ったまま蛇行する練習。これを、なるべく長い距離でスムーズにリズミックに繰り返しできるようになるまで繰り返し練習する。

谷側テールずらしでテールの浮かし高さを小さくする練習(30分)

次第にジャンプをしてもテールの上がりを小さくする。但しジャンプの動作は同じである。これはスキーの面と雪面との間にかかる力を静的なものから動的(ダイナミック)なものに変化させる練習である。スキーと雪面との間の力の変化とその変化の速度(微分)がスキーをターンさせる場合にそのきっかけを作り出したり、ターンの方法を決定する大きな要素であるからである。(プルークボーゲンは静的である)

はじめての小回りターン(山側へ)(1時間30分)

両側連続テールずらしで谷側へのテールの浮かしを小さくすると、テールが雪の面に着くまでに、雪面を横に滑っているわけで、これはすなわちスキーは山側へ方向が変って、回転が始まったことになる。テールがしっかり雪面をとらえたあと、ななめすべりの姿勢を保つと、スキーは真っ直ぐにすすむのでは山側への回転を続けていることに気が付く。そしてスキーは斜面と直角、すなわち水平になったところで静かに停止する。これが小回り(山側)パラレルターンである。これを実感できると気持ちがよい。

この感覚をつかむために停止したところでストックターンをして、右、左の両方が同じようにできるようになるまで繰り返して練習する。視線は足元やスキーを見ずに、常に前方10メートル位に保つ事に気をつける。 

足で登る

これらの練習には、ゆるくて平らで(でこぼこがない)他のスキーヤーやスノーボーダーが来ないような斜面を使う。当然のこれらの練習は続けて行うので滑った後は足で元の位置まで登ることになる。リフトは使わない。この登る動作がスキーと身体の一体感を醸成し、身体に負荷をかけるので身体各部筋肉の増強と有酸素運動能力の向上につながる。廣嶋スキートレーニングは10人以上のグループで行うのが望ましい。登るときには前に滑った人を追い越しても構わない。むしろ他の人より回数を多く滑ることが上達の秘訣である。コーチはグループ全員のそれぞれの出来具合に気を配り、それぞれのトレイニーに対して的確なアドバイスをすること。トレイニーがその動作を見てまねをして覚えるために各動作をはっきりとしてみせる。トレイニーは自分の動作が見えないので、多くは身体の動きが自分が考えているより小さいことに気が付かないので、オーバーに身体を動かしてやってみせることが必要である。 

ジャンプなしの小回り(山側へ)ターン

テールずらしのジャンプの動作中は雪面から離れてかかる力がなくった時にテールは自由になりこれをずらしてきた。このジャンプ動作のかわりに、スキーを雪面から離さずに膝をある程度の早さで屈伸させて上体を揺らすような上下の動作を行うと、それに応じてスキー面と雪面との間にかかる力は連続的に変化する。この力が減少しているとき、力がゼロにならなくても、ジャンプしたときと同じようにテールを雪からの拘束を解いて谷側にずらすことができる。いったんテールがずれたらこれは回転の始まりであり、そのままななめすべりの姿勢を保つとスキーは回転をつづける。ただし回転中はスキーのテールがずれるのではなく、エッジが雪の面をとらえながらスキーの側面に付けられている内側へのカーブにそってまわることを意識する。回転中のスピードが出れば出るほど遠心力によって雪面へかかる力が大きくなり、そのためにスキーの反りが大きくなり、したがってより小さな回転が可能になる。スキーの側面の内側へのカーブはスキーが回転するためには無くてはならない仕掛けである。 回転のきっかけではスキーは「ずれ」るが、回転中はずれなくても曲がるのである。滑った後の雪面を確認し、シュプールが細くはっきりときれいな円弧を描くような滑り方をするように心がける。この練習を右と左が同じようになるように繰り返し行う。

角度のある小回り(山側への)ターン

ジャンプなしの体の上下動をきっかけとした小回り(山側への)ターンができるようになったら、滑り出す角度を少しづつきつくしていく。また慣れるに従って斜面の角度も少しづつきつい場所を選ぶ。この課程中にはスピードが上がるに従って上下動作を極めて小さくしても回転のきっかけを作ることができ、よりスムーズに回転を始めることができるようになることに気が付く。この練習を右と左が同じようになるように繰り返し行う。最終的にはまっすぐすべりからはじめ、ゆるい斜面でもある程度のきつい斜面でも、右でも左でも、ゆっくりでも速いスピードでも、できるまで繰り返す。また「くの字」の形を極端にしてスキーをより傾ければ回転半径は小さくなり、上半身をのばせばより大きな半径になるので、その具合も身体で覚える。

(続く)

ジャンプによる大回り(谷側への)ターン

前落としによる大回り(谷側への)ターン

ヴェーデルン

抜重をきっかけとする高速ターン

踏み込んで加速する高速ターン

こぶを利用するターン

外エッジを使うターン

スケーティング

滑走(クロスカントリー走のように)

ジャンプ

急斜面

ポール技術

高速滑降

ここまでの各教程を習得し、スキーの扱いに充分慣れたら、高速でのスキー扱いを習得するために、より急で長距離の斜面を利用して「高速滑降」を練習する。ここでは、恐怖感を払拭してスピード感覚を磨きより高速に滑降する技術を習得する。空気抵抗の減少法、コースの取り方、緩斜面での増速法、こぶの飛び方、ショックの軽減、転倒方法、などを学ぶ。この練習には時間を計測して行うと効果が向上する。

深雪

重い雪

アイスバーン

山岳スキー

高山スキー

 


シーハイル!!