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ミュンヘン出発
集合場所の「BMWモトラートホール」(BMW
Motorrad Hall)は大きな倉庫に簡単な受付カウンターがあるだけ。ツーリングリーダーのルディ(Rudi
Gärtner)さんが使用するオートバイを広い倉庫から取り出し、参加者から誓約書を集め免許証を確認し準備を整えている。

オートバイはなにが良いかと聞くから、発売まもない
R1200RTを希望したがあいにく他のメンバーがすでに借り出していたので叶わず、ルディさんの、「結構きついワインディングロードの峠越えなので軽くて走り易いロードスター(R1150R)がよかろう」、とのアドバイスを受け入れた。 どうせ途中でバイクを交換するのでこだわる必要はなかった。

メンバーはルディさんの他ドイツ人5人、アメリカ人2人、それに私の総勢8人。すぐにメンバー全員と打ち解けた。ドイツ語と英語での簡単なブリーフィングが行われる。ほとんど事前に送られていた「旅行ガイド」に記載されている内容であるので、全員了解。冗談もでて和気藹々の雰囲気で定刻の8時に出発。

グループ走行のインストラクションで「自分の後ろを走行するメンバーが常に見える位置にいること」は、この旅行期間中にその重要性を認識した。それによって長い旅行期間中誰一人はぐれることはなかった。
ミュンヘンからは敢えてアウトバーンは使わず、一般道を南下して、ヴァルヒェン湖畔のカフェで最初の休憩。 ここまでの間の風景や道路の様子の記憶が少ないのは、きっと前のライダーを追いかけることに意識を集中していて、景色を楽しむ余裕がなかったからだろう。 休憩中の飲み物は当然アルコール抜きのドリンク。 ドイツ人たちは日本ではなじみのない「アプフェルショルレ」すなわち「りんごサイダー」を好んで飲んでいた。早速ドイツ語で注文することになるのだが手始めは国際商品である「コカコーラ」でお茶を濁す。
このカフェは
Google Map で Strandcafe
Bucherer Walchensee だと特定できた。

オーストリアとの国境であるシャルニッツ峠(952m)はまだアルプスの峠とは思われていないので、なんの案内もなく越えたことには気が付かず、そのままインスブルックの町を横目に通過し、イン川に出た。

イン川沿いに対岸の高速道路を眺めつつ一般道を遡上するうちに、周りがアルプスの景色に徐々に変化していく。イン川から離れて初めての山道を登るうち、初めての「アルプスの峠」、ピラーホーエ(Pillerhöhe)ではレストランの駐車場から見下ろすと遥か下のほうに狭い谷をわずかに蛇行して流れるイン川が光っている。 一気に長い坂を下りるとそこは峠から見下ろしたプルッツ(Prutz)の町。ここはなおイン川に沿った街道でスイスのサンモリッツへと続き、国境近くで分岐してレッシェン峠(Reschenpass)を越えてイタリアのメランへと至る交通の要所で多くの車やオートバイそれにトレーラトラックが行き交う。このあたりはスイスで見られた底が平らな広い氷河の作った谷とは異なり、日本と同様に川の流れが作った狭い谷と、川からやや離れた高い台地に点々と家々が見える。
プルッツの街道脇のレストランでの最初のランチは、ご当地名物「ケーゼシュペッツレ(Kasespatzle)」。 水は日本と違い注文して初めてでてくる。皆が注文するのはガス入りの水であるが私だけがガス抜きの普通の水。いつもいつもガス抜きを注文するので、たまにコカコーラを注文すると仲間から、「おや、ガス抜きではないの?」と冗談も飛び出す。ペットボトルの飲料はほとんど売られておらず水もコーラも飲料はガラス瓶かグラスで出される。 環境対策の違いを実感する。

ガソリンスタンドの表示の数字が突然大きく変わったので国境を越えスイスに入っていることに気がついた。ヨーロッパのほとんど国が統一通貨のユーロを使っているが、EUに加盟していないスイスだけはスイスフラン。国際空港には両替銀行があるが道路の国境にはなにもないので、ポケットには両方の通貨を用意しておかなくてはならない。
ヨーロッパ大分水嶺
スイスの最も東部に位置する一大リゾートのサンモリッツの手前約30キロ、ズッシュ(Susch)で、イン川から離れて右に折れると、フリュエラ峠への道に入る。ここから峠までは氷河が残した典型的な広くて明るいスイスの谷をはじめて実感できる。 初めてのヨーロッパ大分水嶺のフリュエラ峠に立ち感慨ひとしお。 峠の手前、東側に降る雨と雪が作った氷河の融けた水はイン川となりドナウ川に合流し多くの国々を通り遥か東方の黒海へ注ぐ。一方、峠の西側に降る雨と雪はライン川となりドイツを横断して北へ流れて北海に注ぐ。

フリュエラ峠(Fluelapass
2383m)
は標高を示す看板が立ち広い駐車場では多くのライダーが休んでいる。道路脇にはまだ雪が残り小さい湖には氷も浮いている

フリュエラ峠から長い長い坂を下るスキー場のダヴォス(Davos)を経て、第一日目の宿泊地フリムス(Flims)までは、サンモリッツからツェルマットまでの氷河特急が走るスイス国鉄に沿った谷の道である。 トゥージス(Thusis)からヒンターライン川(hinter
Rhein)沿いの狭い谷を下り、やがて明日走るオーバーアルプ峠から流れ出るフォルダーライン川(vorder
Rhein)と合流し一つのライン川(Rhein)となる。
宿泊したホテルアドゥラ(Hotel
Adula)は典型的なスイスの山のホテルであるが、セキュリティ設備の整った立派な地下駐車場が備えられて安心である。旅行のカタログではホテルの一人部屋希望は追加費用が必要であるとされていたので二人相部屋を覚悟していたが、旅行中すべてのホテルで大きな部屋を一人で使用するように提供されたのは思いもかけずラッキーであった。西欧の文化・習慣では、男同士が一つの部屋に泊まることはないのかもしれない。ここフリムス(Flims)は大きなスキー場を抱えたリゾートである。

ホテルの窓からは前ライン川に削られたグラルナーアルプス(Glarner
Alpen)南面の荒々しい山の斜面とその裾にゆったりと広がるスイス特有の谷の村のたたずまいが望める。教会の尖塔が美しい。 やはりドイツ人はビール好きである。ホテルに到着したら、なにはともあれホテルのカフェテラスでビールである。 走行中はアルコールを飲まないからなおさら彼らの飲むピッチと量がすごい。ちょうど、夏至にあたるこの時期なので特に日が長く、夏時間でもあるので10時半まで明るいが、さすがに山の中なので夕方からはとても涼しくなりこの上ない爽やかである。
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